フランスの今と私について

世界は今、前代未聞の事態に陥っている。

久々の投稿で、暗めの出だしとなってしまい申し訳ない限りですが、私は今もフランスリヨンで暮らしています。コロナウィルス(Covid-19) の影響で外出できない日々が続いているのですが、せっかく毎日家にいて時間もあることなので、これから暫くは、ちょっと真面目にここ最近のフランスでのコロナウィルスに関連する様子と私の周りに起こっている出来事や日々考えている事について綴っていきたいと思います。

今からちょうど一か月前の3月16日、フランスではマクロン大統領が、国民に向けたテレビ演説を行い、前代未聞の外出禁止令がフランス全土に敷かれる事態となった。それから約一か月後の先日4月13日、再び大統領演説があり5月11日までの外出禁止延長が決まった。現在、4月15日時点で発表されているフランス国内の感染者数は106,206人、死者数は17,167人となっている。先週から今週頭にかけてが、一つの山場と言われており、これでも今週に入ったあたりから、入院患者数と重篤者数は減少傾向にある。今この瞬間も自らや家族の命を危険にさらしながらも必死に働いてくださっている全ての方々には心から感謝しているし本当に頭が上がらない。今回の外出禁止延長の知らせは、フランス在住者にとっては驚く人は誰も居なかっただろう。この国で暮らす人々は皆、それが妥当な判断だと思っているし、マクロン政権支持、不支持に関わらず今回の非常事態措置は、多くのフランス国民が評価しているように感じる。

私はというと、この一か月間かなり悶々とした日々を過ごしていた。実は、フランスがこのような事態に陥る直前の3月中旬の週末、食いしんぼうなわたしは前々から予約をしていたレストランで友人と夕食を食べていた。19時半ごろ、満員だった店内がざわつき始める。しばらくしてウェイターのギャルソンが困惑した表情で私たちの席へ近づいてきて言った。「たった今、政府の発表があり今晩の00:00を境に全ての飲食店、カフェ、バーは閉鎖になるんだよ。僕たちも今晩で店じまいだ。君たちはラッキーだね!ボンソワレ。」 一瞬の出来事に私はしばらく意味が分からなかった。あと5時間後にはフランス全土のお店が閉まる。一体いつまで閉まるのだろう。だいたい、そんな事昼間のニュースでは一切言ってなかった。こんなにも急な事などあるのだろうか?半信半疑だった。その日帰宅後、ちょうど時計が0時になるのを見届けながら、妙な興奮と不安な気持ちで眠りについた。

それから2日後の3月16日夜20時。マクロン大統領の2回目のテレビ演説があった。フランスでは、何か国難があると決まって20時に大統領がテレビに登場し国民に向けて大統領の考えや今後の政策を述べる。2018年に起きた”Gilet Jaune” と呼ばれる燃料税引き上げに伴う黄色いベスト達による大規模デモの時もそうだった。しかし、今回の演説はあの時とは緊張感が全く違っていた。20時になると、近所中がシーンと静まり返る。国の重大発表に皆が耳を傾けているのをひしひしと感じた。ラマルセイエーズのフランス国歌と共に、パリ8区にある大統領官邸 “エリゼ宮殿” がドーンとテレビに映し出される。このフランス国歌から始まり、演説へ入るお決まりの流れは、フランス国民にとって国家の一員としての士気を鼓舞する効果があると常々思う。(日本人である私でさえ、「今私はフランスにいるのだ。」と再認識させられるのだから。) 演説は、30分に及ぶ長いものだった。大統領は、何度も「私たちはウィルスとの闘いの中にいる。これは戦争なのだ。これは戦争なのだ。。」と繰り返し国民に訴え続けた。大統領は終始カメラから目を逸らすことなく、ハッキリと真摯に今我々が置かれている状況と今後の厳しい制限措置に関して説明をした後、これから訪れるであろう大きな波にどうか耐えるよう、そして必ずやこの闘いに打ち勝つだろうという希望を込めた激励のメッセージを以って締めくくられた。

それから数時間後、私の携帯に一通のメッセージが届いた。

フランス政府からのSMS だった。政府から外国人である私個人の携帯にこんなメッセージが届いたことなど勿論これが初めてである。後で周りに聞いたところ、どうやらフランス国籍者にもこのメッセージは届いていたようだ。つまり、短期旅行者や不法滞在者を除く全ての人々にこのメッセージが一斉に送り届けられたということだ。かなりの徹底ぶりである。

⦅ コロナ警報。 外出禁止の規則厳守が共和国大統領より発令されました。ウィルス拡大を阻止する為、人々の命を救う為に絶対にこの規則を遵守するようにして下さい。在宅不可の仕事に携わる者(医療従事者やスーパー、薬局の店員さん等を指す)、必要最低限の買い物と健康に関わる必要最低限の外出のみ、外出証明書を携帯することで認められます。⦆

再び胸の中がソワソワした。こんな気分は東日本大震災の夜以来である。事実、この日を境に、人々の緊張感と緊迫感が一気に高まり、今まで当たり前に存在していた日常は全て姿を消した。

異国の地で、ウィルスとの見えない戦争が始まってしまったのだ。

これで明日からどうなるのか全く分からなくなった。